映画『夏へのトンネル、さよならの出口』
八目迷先生原作小説『夏へのトンネル、さよならの出口』映画版を見ました~。
略して夏トンの感想やレビューをオタク・作家目線でしていきます
ちなみに私アオキは原作も事前情報も一切知らない状態で見ました。なので原作を知っている方には参考にならないです。
私のようにイラストや雰囲気で気になって、見ようか迷っている人向けです。
一部ネタバレ注意です
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夏へのトンネルさよならの出口の感想
結論、『夏へのトンネル、さよならの出口』はアニメオタクには物足りない。でも原作が気になる──そんな映画。
正直に言うと微妙でした。でも原作宣伝のためと考えたら成功なのかな
つまらないわけではないが、面白いかどうかと言われるとうーん・・・。
オタクならどこかで見たことのあるストーリーや設定です。オリジナリティにアレンジする斬新さ、新しさなどはなかったように感じます。
一方で「尺が足りなかったんだろう。原作から色々改変、削除されてそうだな」と。映画の尺に納めなくてはいけない制作側の事情も感じる作品でした。
なので原作ファンには同情します
おそらくアニメでじっくりやれば『あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない)』のような作品になったのではないか。
作画は綺麗
夏へのトンネルさよならの出口は映像・作画が綺麗です。
ただ綺麗じゃなくて見せ方も個人的には推せる。カメラのアングルとかね。飛行機、ジンベイザメ、光の陰陽を使った二人の距離感の見せ方は巧を感じます。
映像や音楽などは流石に映画クオリティですね
なのでビジュアル的なクオリティは心配しなくて良いのでは?と。
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ストーリーは微妙
ストーリーは途中まで好きでした。途中までは。
後述しますが、オチに向けてのシナリオはツッコミどころが多い
見終わって「結局何を見せられたのだろう。彼らは何をしたかったのだろう」と。この辺りは制作側の趣味、趣向を感じてしまった。
原作との違いは分かりませんが、映画に関しては「世間様はこういうのが好きなんだ」という上の方の意見が現場に押し付けられたような気がする。
制作側の性癖が出たという点では、初期の新海誠作品味を感じますね
ツッコミどころが多い
ネタバレ注意なので嫌な方はスキップしてください
以下3つのツッコミを入れたい。
ツッコミポイント
- 主人公は漫画を語れるほど漫画読むの?好きなの?
- 好きになる流れは分かるけど、恋に落ちる理由付けが弱い
- 妹そんなあっさり諦めるんかい
1.主人公カオルがあんずの漫画を褒めても説得力がない
あんずの書いた漫画をカオルが褒めます。オタクのような褒め方をします。しかしここで1つ疑問。
カオルってそんな漫画読むの? 好きなの?
音楽が好きそうなのは描写的にわかるのですが、漫画や読書好きな感じはしません。もし部屋の本棚にそれがあったならそれが理由付けかもしれませんが、本どれほどあったかな。
それこそあんずの祖父の漫画も知っていて、もちろん作者の祖父のことも知っているくらいの漫画好きの設定にすれば良いのになと。せめて子供の時に見たことあるとか。
そうすればこの後の恋愛展開、あんずと仲が深まっていくことにも説得力が増しそうなんですけどね。まあ、あんずが喜んだのは自分が好きな人に漫画を褒められたからですもんね。彼が漫画好きかどうかは彼女には関係ない。
2.あんずとカオルが恋に落ちるのが不自然
年頃の男女があれだけ時間を共にすれば恋に落ちるのはお約束。そういう作品でそういう流れってのは分かります。
しかし理由付けが弱いかな~
全てを捨てる覚悟で挑戦しているカオルがいつ彼女にそこまで惚れたんだと。あんずが彼に惚れるのはまあ、見ていれば察しがつくので良いでしょう。
ただ自分の人生を捨ててまで求めていた妹をあっさり諦めるくらい、カオルにあんずが魅力的に見えたのか疑問。
正直友達レベルな気がします
メールの「だいすきだ」は多分感動ポイントでしょうけど「え、いつの間にそんな好きになってたん?」とクライマックスで違和感。もっとじっくりやってほしかったなあそこは。
欲を言えばカオルがあんずに惚れる決定打があれば良かったのにと思いますが、尺が足りないんでしょうね。
3.なんのためにトンネルに挑んだのか
あんずと恋に落ちるためって感じです
でもだからこそシナリオが出来レースというか、「こういう作品が良いんだろ」感が否めない。そして最後の感動でもあまり感情移入できない。
例えるなら今まで山を登って来たのに7合目くらいで「やっぱり下山して海行くわ」って急に言われた感じで冷めちゃった。
恋愛の理由付けも弱いから、妹をずいぶんあっさり諦めたな~と感じてしまうのよね。
まあ、挑まないと分からない物もあるか・・・?
君の名はに寄せすぎた
ここではネタバレしないので言えませんが、そのように感じました。君の名はというよりか、新海誠作品をリスペクトしすぎたような気がします。
ほしのこえにも似てる
たまに主人公のカオルが滝君に見えるアングルもあったかな。まあ、これは僕の感じ方だがw 世界を救えなくて闇落ちした滝君に見えたw
制作側が売れる作品を考えるのは分かりますが、もうこういうのはお腹いっぱいかな。新海監督だって今年は今までと違うテイストの作品だしてる訳だからね。
BLもいいぞ~
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原作は面白いらしい
しかしこの夏へのトンネルさよならの出口はトーホーシネマズのレビューでは高評価。
その中で原作との比較をしているレビューがあるのですけどそれを読む限り、原作は映画より面白そう。そして案の定、原作とは異なる点があるようだ。
映画は尺も短いので原作を見ている人向け、とも言える。とはいえ原作通りでもないしキャラの扱いも異なるようなので原作を読んでから映画を見るのが良いとも言えない。
ただ最後に言えるのは気になっているなら見て損はないだろうということ
余談:ホラーにしても面白かったかも
夏へのトンネルさよならの出口の序盤で、とある小説が浮かびました。
それは、先日読んだホラー小説『夜市』
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なぜ浮かんだか。それは色々似ているから。
そしてつい最近読んだからww
だから脳内で勝手にホラーになるようなイメージしていました。たとえば死んだ妹がウラシマトンネルに出てきて、二人を追いかける(復讐する)とか。
妹はカオル大好きですからそんなことしませんけども!でもあのトンネルに取り残された何かがいても面白そうだな~と。ウラシマトンネルの設定は夜市に通じている部分もあり、面白いですね。